サービス提供責任者の登録ヘルパー支援術!

ヘルパーステーション和翔苑所長の小谷は介護福祉士会で様々なセミナーや研修に参加し講師をしています。
今回は登録ヘルパー支援術という事でソーシャルケア研究所の本間様との対談を行いました。
下記の文章は介護福祉士会のニュースで取り上げあられた部分を抜粋しています。
サービス提供責任者の方は是非ご一読ください!!

この内容は介護支援netで取り上げられた記事になります。
http://kaigosien.blogspot.jp/2013/04/blog-post_30.html←そうだったのか!サービス担当者会議
http://kaigosien.blogspot.jp/2013/02/adladl.html←今月のもやもや

サービス提供責任者必見! 登録ヘルパー支援術

正職員のヘルパーに比べ、登録ヘルパーの仕事のスタンスは実に様々です。中には「ちょっと割りのいいバイト」感覚の人もいて、厳しく対応すると仕事を辞めてしまったりするので、サービス提供責任者はヘルパーコーディネートに気を遣います。だからといって言うべきことは言わないと、現場は切り盛りできません。それが結果的としてヘルパーの成長につながり、事業所の質の向上にもなるのです。
人材不足が常態化している現在、サービス提供責任者にはこれまで以上に職場のマネジメント力が求められています。自らの業務量をコントロールする意味でも、現場のケアの質を向上させる意味でも、登録ヘルパーをいかに支援し、仕事への意識を高めてもらえるか。その能力が大きな影響力を持つのです。
東京都墨田区の訪問介護事業所で、管理者兼サービス提供責任者として従事する小谷庸夫さんは、「うちの事業所ではヘルパーは滅多に辞めません」と言います。その裏にはどんな工夫や配慮があるのか、登録ヘルパー支援のノウハウをうかがいました。

取材/文 ソーシャルケア研究所 本間清文

お話を伺った人
小谷庸夫(介護福祉士・調理師) 
社会福祉法人 八広会 ヘルパーステーション和翔苑(東京都/墨田区)
所長・サービス提供責任者

はじめに
訪問介護は、ヘルパーが一人で個別訪問して行う仕事です。デイサービスや施設介護のように、先輩職員の姿を見て学ぶことも、実地指導(OJT)を受けることも難しいのが現状です。指導するにしても、在宅の利用者は、意識が比較的しっかりしているので、目の前で注意をするのは抵抗がありますし、だからといって言葉だけで上手に伝達・指導するのには限界があります。
加えて、ヘルパーは登録制の人が多く、仕事量から積極性・技量に至るまでさまざまで、一元的に管理や養成を行うことが非常に難しい業種です。
一方で、一対一の濃密な人間関係の中で向き合える仕事は他になく、介護がうまく行ったときは面白く醍醐味があって、これほど魅力を感じる仕事はそうありません。
少しでもやる気のあるヘルパーには仕事を続けてもらいたいですし、成長してもらえるように、私は携帯メールをフルに活用して、情報共有や信頼関係の構築に励んでいます。
ここでは、そのエッセンスを少しでも共有していただければと思います。

Ⅰ ヘルパー自身の安心感を育てる

ヘルパーも支援対象として接する
基本的なヘルパーの教育においては、都合がつかず出来ないこともあるが月に1回は会議を開きたいと思っています。同じ内容の会議を午前と午後に分けて行うこともあります。集団ミーティングの場は、基本的なこと、最低限伝えなくてはならないことしか言えないので、個別に関わることも重要です。
訪問介護は一人で他人の家に入り、利用者やその家族と向き合い仕事をしなければなりません。とても神経を使う仕事であり、施設のように設備も整っていないなかでの仕事ですから、さまざまなサポートが欠かせません。とりわけ登録ヘルパーは、常勤ヘルパーと違って頻繁に顔を合わせる機会がありません。だからこそ、まめで細やかなフォローと、信頼関係の構築に重きを置く必要があると感じています。その意味で、利用者の支援と同様に、登録のヘルパーも支援の対象として見ていく必要を感じています。

ヘルパーに安心感を持ってもらう
 登録ヘルパーに、前向きに長く務めてもらうには、「安心して働いてもらう」ことが最低条件です。現場では、すべての判断や責任をヘルパー個人に委ねて、押しつけてしまいかねません。私はミーティングの際には、「現場で少しでも判断に迷うことなどは、その場で私に電話をして」と伝えています。不安を抱えた状態は非常にストレスを膨らませますし、それでは長続きできるはずもありません。
 また、通常のミーティングの場では、制度上行ってはいけないこと、介護報酬に関わる事項などはあまりレクチャーしません。短時間に詰め込んでも覚えられないからです。個々のヘルパーには、それぞれの利用者宅での業務内容を伝え、例外的な援助の依頼があったり、判断を求められたときには、その都度、電話確認をするよう伝えています。

利用者にも安心感を持ってもらう
この仕事は、利用者とヘルパーとの関係性が非常に大きいので、ヘルパーが頻繁に変わることは避けたいと思っています。ですが担当ヘルパーが都合で、どうしても訪問できないことがあります。利用者の中には、割と無思慮に代替えのヘルパーを頼まれる人もいますが、その際は、「代替えの訪問は可能ですが、その場合、こんなデメリットも予想されますが大丈夫でしょうか」等と説明して判断を仰ぎます。利用者は「そこまでヘルパーの調整に気を使っているのか」と気付き、サービス提供責任者と利用者との関係構築にもつながります。

代替えヘルパーのデメリット例
・生活援助などでは、キッチン用具の場所など利用者が再度、ヘルパーに伝えなければならない可能性がある
・身体介護などでは転倒リスクなどが高まる可能性がある
・外出介助などでは移動がスムーズに行かず時間が長くかかる可能性がある

双方の安心感
仕事のコーディネートをする際には、利用者・ヘルパー双方が安心できる関係性に配慮することは欠かせません。
そこで、日頃からヘルパーの価値観や言葉づかい、方言、態度などを把握しておくことが重要です。いまは都会の暮らしとなっている利用者には、同郷のヘルパーは話しやすいですし、また価値観の近いヘルパーとは信頼関係の構築ができやすいものです。口調が早い方には、同じような口調のヘルパーがしっくりきたり、ゆっくり話す方、認知症の方などにはゆっくり話すヘルパーが合う場合が多いものです。
また、腰痛持ちの利用者にはせっかちな方が多いように感じます。ちょっとしゃがんで作業すれば済むものなのに、そうはせずに腰を曲げる動作で済ませてきた結果、腰痛に至っていることが多いですから。こうした方には、気遣いの細かな対応ができるヘルパーに担ってもらうようにします。
もちろん、利用者宅を訪問し、その場で収集した情報などさまざまな条件がコーディネートに関係するのは当然です。しかし、私が最も重視するのは、利用者とヘルパーとの相性の部分です。介護技術などは後からでも身につきますが、相性だけはそうもいきません。

Ⅱ チームによる支援であることを意識づける

チームケア意識を育てる
 ヘルパー支援のうえで、最も気をつけているのは、一人ひとりがチームケアの一員として、いかに行動してもらうかということです。
私も含めどのヘルパーにも言えることですが、みな利用者と良好な関係になりたい、好かれたいという気持ちを持っています。そのため、つい仕事として計画されていないこと、プラス・アルファといった援助をしてしまいがちです。その気持ちを優先していると、訪問介護計画とはかけ離れた援助になりかねません。利用者に好かれるために、その場その場で利用者が投げかけてくる要望に応えようとすると、逆に利用者は不信感を抱くこともありますし、チームケア、チームワークが崩れてしまいます。
 そもそも利用者は、ヘルパーとの人間関係だけを求めてサービスを利用しているのではなく、自分の生活を成り立たせるために利用しているのです。私たちヘルパーも、そのために支援に入っているのであって、利用者に好かれるために入っているのではありません。援助の結果、気に入ってもらえ関係が良くなることはいいことですが、好かれることを目的化してしまうと、本来の援助とは別のものになってしまいかねません。
 だからこそ、訪問介護計画にはない、日頃とは異なるサービスを利用者から要望され、判断に迷う場合には、その場でサービス提供責任者に電話し、判断をあおぐように徹底しています。

利用者にもチームケアを理解してもらう
利用者にも、公的制度としてのサービスであることを理解してもらう必要があります。
たとえば、予定のサービスは調理だけであったのに、訪問すると買い物も頼まれた、などのことは訪問介護ではよくあることです。利用者は、いつも自分を支援してくれる目の前のヘルパーに要望を口にします。初回の訪問で、サービス提供責任者に会っていても、サービス提供責任者は普段、あまり顔を見せませんから、サービス提供責任者の存在などは忘れてしまいます。ですが、契約にない事柄は個々のヘルパーには判断できないことを、きちんと理解してもらわないとなりません。そこで、ヘルパーが電話で判断を仰ぐのは、あえて利用者の前でするように徹底しています。
繰り返しますが、利用者の「目の前」で電話することが重要です。なぜなら、ヘルパーが利用者の目の前で判断を仰ぐ姿を見て、利用者は「ヘルパーの勝手な判断で仕事をしているのではなく、サービス提供責任者等といったチームでケアに当たっているのだ」と、自分への支援が体系的に進められていることを分ってもらえるからです。
 もちろん、こうした電話回答だけでは利用者の納得が得られない場合もあります。何しろ介護保険での訪問介護は非常に複雑なルールになっていますから、利用者には理解しがたいものです。必要であれば、私が利用者宅を訪問し、制度の説明をし、ヘルパーの業務内容について理解してもらったりもします。

情報を共有する
 現場で起こったことは些細なことでもかまいません。極力、メールで私に報告してもらうように統一しています。これは、私が一番、工夫している点です。
どのような内容のメールが来るかというと、その日、現場であった気付きや業務上の伝達事項までさまざまです。それらメール報告が一日に20本ほど送られてきて、それぞれ適宜、返信を行います。
ホームヘルプ業務は、基本的に一人でこなす孤独な仕事です。だからこそ、チームでの情報共有が欠かせないのです。悩み事や困り事などでも構いません。いろいろなことを、メールで共有するようにしています。大切な気付きや報告があった場合には、それに対し私からも「大切なことだよね」「大事なことだね」といった返信を返し、共感・共有する機会としています。

Ⅲ 個々のヘルパーを育てる支援方法を工夫する

ポジティブ・メッセージを伝える
以前、非常に援助拒否傾向の強い利用者がいました。個々の介助どころでなく、人が訪問して挨拶することすら受け付けたくないといった状況でした。ケアマネジャーは、社会的孤立状態の解消に、デイサービスへ通わせたいようでしたが、そんな所に通える状態ではありません。
そこで、私たちヘルパーが地道に訪問介護を重ね、1年かけてまず、紙パンツを交換させてもらええるようになりました。さらに時間をかけ、遂にはデイサービスに通えるようになりました。そのときは、私自身もとてもうれしく、「○○さんが、デイサービスに行けるようになって良かったですね。ヘルパーの力ってすごいよね」といったポジティブなメッセージをメールで伝え、共有しました。
介護は日頃、達成感や効力感をあまり感じることがない仕事であるがゆえに、こうしたポジティブなメッセージを伝えていくことも非常に大切だと考えています。

その人らしさを尊重する
仕事のノウハウをすべて型にはめて、ヘルパーに強要することはなるべくしないように努めています。また、一人のヘルパーがうまくできたからといって、そのやり方を他のヘルパーに当てはめることも避けます。
この仕事は、相性や関係性をも利用しながら利用者と関わっていく仕事ですから、私のやり方を他人が真似してうまく行くとは限らないことが多いのです。ヘルパーにはそれぞれに個性や持ち味があり、その人らしさがあるのですから、それを生かせるようなヘルパーになっていかないと、利用者との良い関係構築には発展しません。
対人援助の仕事は、利用者との関わりを自分なりに考えるからこそ面白みがあるのであって、こと細かく他人から強要されると面白くない仕事に感じられてしまいます。人は、仕事に面白みややりがいを感じられてこそ、育っていくのです。また、認知症の方などは、表面を取り繕ったようなぎごちない対応など、通じないことも多いものです。ヘルパーの人間性がにじみ出るような、自然な関わりのほうがしっくりすることが多いのです。
そうやって、一人ひとりのヘルパーが「自分らしい」援助技術を培ってくれることは、他のヘルパーも学ぶ機会になります。たとえば、私は性格的に、利用者に対して「こうしてください」「こうしましょう」と指示的なことを言うのが苦手なのですが、あるとき、別のヘルパーが利用者に指示的な口調で話すと、スムーズに支援が流れることがありました。「なるほど、この利用者さんには、多少、指示的な話し方のほうが良いのか」と、私自身も学ばせてもらえました。

ステップアップの支援
ヘルパーの介護力に不足があると思われるときには、長い期間、同行訪問して介護技術の習得に付き合うこともあります。それには、家族の理解・協力も欠かせません。
 以前、体重の重い男性で、起床介助が必要なことがあったのですが、担当してもらうことにしたヘルパーは技術が未熟でした。訓練すればできると思われたので、家族に説明し、2か月ほど同行訪問し、結果的に介護技術が習得できたケースもありました。
在宅介護は施設と異なり、毎日、特定の人だけに援助に入るわけではなく、週に1回しか訪問しないケースもあるなど、ヘルパーはケアを行う機会を自由にコントロールできません。だからこそ、教育や指導に時間を要するのであり、それがまた、養成の難しさを感じる点でもあります。
 また、ヘルパーの教育やレベルアップにおいて、実践を通じてステップアップをしてほしいときには、少し背伸びが必要な現場に入ってもらうこともあります。たとえば、入浴介護の技術を身につけてほしいし、頑張ればそれが可能だと思えるようなヘルパーがいれば、「私はあなたに、こんなヘルパーになってほしいと思っているのだけれど、Bさんという利用者さんが入浴援助が必要だから、がんばって仕事に入ってみない?」と直接、想いを伝えます。ヘルパーが了承すれば、現場に入ってもらいながら見守っていきます。

Ⅳ まずは言い分を聞く姿勢が大切

ネガティブなことは個別に
 時に、利用者からヘルパーに対するクレームが舞い込むこともあります。このようなネガティブなことを話さなければならないときは、まず一対一で話し合う場をセッティングします。そのうえで、「○○さんから、こうした連絡(苦情)があったけど、どう思っている?」と聞きます。
 苦情などを受ける場合、ヘルパー自身は指摘されるまで何も気づいていないことが大半です。苦情の対象となった事柄についても、案外、「よかれ」と思ってやっていることが多いのです。ヘルパーにはヘルパーの言い分があるわけです。
一対一で話し合う場合、まずは、どうしてそのように行ったのか、その理由を聞かせてもらいます。それを聞いたうえで、どのように対応すべきかを検討し、ヘルパーに非がある場合は行動を改めてもらうよう注意します。同時に利用者にも、「事業所でヘルパーとこのような話し合いをしましたので、もう少し様子を見てください」と頼みます。
 話し合ってもヘルパーが納得しない場合、また改善を指示しても改められないようであれば、配置換えもやむをえません。もっともこの仕事は、相性なども大きく影響してきます。「あの利用者とは相性が悪いけど、別の利用者とは抜群に相性が良い」ことが往々にあります。それがこの仕事のおもしろいところかもしれません。

報告しやすい姿勢でいる
私は、ヘルパーがトラブルを抱えているにも関わらず、それを黙っていたり、隠していることが最もリスキーだと考えています。在宅介護は密室で一対一で行われることが多く、ヘルパーも利用者の影響を大きく受けますし、利用者もヘルパーの影響を大きく受けるサービスです。
その場の流れで、計画に入っていないサービスを頼まれることは珍しくありませんし、ヘルパーも良かれと思ってやろうとすることがあります。ですから、頭ごなしに否定するのではなく、まずは現場の話をよく聞かせてもらいます。
緊急時でもないのに、計画にないイレギュラーな援助をしたとするなら、制度がそれを認めていない以上、指摘するしかありません。「◯◯さんが喜んでくださってよかったね。でも、◯◯は介護保険ではできないことだったよね。今度から通常のケアに含まれてないことをやるときには事前に電話してくださいね」と注意を促します。
このとき、ヘルパーが「やってあげたい」と思った気持ちや、そうしたことで喜んだ利用者の気持ちに共感を示すことが大切です。そうでないと次回からヘルパーは報告しづらくなってしまいます。誰でもミスは起こすものです。そのミスを頭ごなしに否定するのではなく、気持ちを理解したうえで改めるよう促します。

報告頻度が少ないヘルパーも巻き込む
登録ヘルパーには、月に何十日も働く人もいれば、数回の人もいます。また、積極的にケア提供をしたいと思う人もいれば消極的な人もいます。このうち、積極的な人は報告も比較的、まめに上がってきますが、消極的な姿勢の人はあまり熱心に報告やメールを寄こしたりしません。
このような人も、きっと何か感じてはいるはずです。報告がないから「大丈夫だろう」と高をくくり、放任していては無責任です。そのような人には、同じ利用者を担当しているヘルパーから送られてきたメールを転送し、情報共有を図ることで、意識を高めてもらうように工夫します。
たとえば、自分からは積極的な報告をしないAヘルパーと同じ現場に入っているBヘルパーから、「最近、利用者さんについて○○だと感じています」というような気付きの報告などがあったとします。その内容をAヘルパーにも情報共有のために転送し、読んでもらいます。このように機会を仕向けると、Aヘルパーからも、「私もそう感じていました」等と返信が返ってきたりします。また、他のヘルパーからの報告メールを共有することは、他のヘルパーにも、「こうしたことを報告すればよい」と、理解につながります。